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お酒は、用法、用量を守ってただしく飲みましょう

休止宣言しましたが、1つうpしなきゃならないものを思い出しまして。
いや、休止は嘘じゃないですよ、この後はまた大人しくなります。コメントの返信もできなくて申し訳ないです、ちゃんと読ませていただきました、精一杯頑張ります。

で……何かと言いますと。
最近まで某所で個人コラボさせていただいてた相方さん、もとい、旦那さま(笑)の蓮葉けろさんから、誕プレ文をいただいていたのですよ!
わけあって、そのコラボが終わるまでうpできなかったのですが、休止解除を待つと、誕生日から半年たってうp、という事になりかねないので^^;
流石にそれはねーわ、と。
ということで、けろさん、あの時はありがとうございましたー! 


さて、追記から本文へ……といきたいところですが、注意事項がいくつかあります。

・拙宅とけろさんのとこのオリキャラ(マスター)さんがいます。
・KAITOの亜種(帯人)がいます。

さらに、一般的な帯人像は「マスター大好きですかまってくれなきゃ自傷します」なヤンデレさんですが、今回の文中の帯人くんは「大人しくて天然なシャイボーイ」です。
……気が付いたらそうなってたんです、うちの帯ちゃん。すみません(´・ω・`)


以上の事を踏まえて、大丈夫! という方は、追記からどうぞ!
*****



「誕生日だそうだね、祝ってやろうかと思って」
「はい?」

 アキラさんがそんなことを言って、さも大儀そうに紙袋を抱えて家に上がってきたのは、2月20日の夕方ころのことだった。
 ぽかんとしている僕をよそに、がちゃんごとんと瓶が玄関のフローリングにぶつかる重い音が響く。紙袋にして4袋、その中身はなにかというと、いろいろなかたちの、色とりどりの瓶だ。……その中身は、だいたい予想がついている。きっとその瓶の中に入っているのは、20歳以上限定の、あののみものだ。
 こういう有無を言わせないようなものいいをする人(というかアキラさん)に対して、なんとなく遠慮がちになってしまうのは僕の性だけれど、それでもやっぱり疑問は口に出してしまうのも、僕の性だ。

「あの、僕の……“KAITO”の誕生日は2月の14日か17日ですけど?」
「ん? あれ、そういえばそうだったね」

 ここにきて初めて気付いた、といったような顔で、アキラさんは腕を組んだ。

「悠サン、いったいきょうはだれの誕生日だい?」
「あ? 誕生日? 誕生日のやつなんていたのか?」

 アキラさんが後ろを振り向くと、一目見てアキラさんが持ってきた紙袋(たち)よりも重いとわかるビニール袋(たち)を両手に提げた悠さんが立っていた。そのビニール袋をいくつか受け取りながら、アキラさんが不満そうな声を上げる。

「誕生日でもなきゃこんなに酒を用意するはずがないでしょう」
「俺はただ、お前が美憂の家まで酒を運ぶのを手伝ってほしいっていうから来たまでなんだが。むしろ何も知らせずに俺をこき使うとか、お前はいったい俺をなんだと」
「あ、じゃあかんちがいかな、誕生日は」

 無視か! と突っ込んだ悠さんの声を、無意識か意図的か(多分後者だ)、華麗にスルーして、アキラさんは僕に向かって微笑んだ。……なんだろう、この不吉な笑み。嫌な予感がする。どうしよう、と、考える間もなく、僕の胸に、なにやら缶がたくさん入ったビニール袋が押し付けられる。慌てて袋を抱えると、満足そうな笑みのままのアキラさんが立っている。

「まあ、かんちがいだとしても、どうせ今日は休みだ。そして明日も日曜だ。悠サンにこれだけ重いモノを持ってきてもらった労力も、無駄にはできない。そう思うよね、たいちゃん?」

 こんな威圧的な笑顔で、たいちゃん、なんて可愛らしい呼び名で僕のことを――帯人、という名前をもらったKAITO亜種の僕を――呼ぶ人は、きっとこの目の前の女性しかいないんだろうな。

「だいいち、ここに酒を持ってくるようにいったのは、キミのマスターな訳だから、たいちゃんが拒否するわけ、ないよね」
「……そうですね」

 僕は、押しに弱い草食系、という言葉の意味を噛みしめながら、客人を家の中に招き入れる。
 僕と悠さんは、早々に靴を脱いでマスター……美憂さんの部屋に向かったアキラさんを見送ってから、どちらともなく顔を見合わせ、溜め息をついた。どうやら、大量の瓶や缶を部屋に運び入れるのは、僕と悠さんの役目らしい。



【お酒は、用法、用量を守ってただしく飲みましょう】



「あれー、誕生日じゃなかったっけ?」
「ふざけるなよ美憂。お前が飲みたかっただけだろ」
「えーっ、違うよお。人聞きわるい言い方しないでくれる、ハルちゃん」
「ハルちゃんゆうな!」

 もうお定まりみたいになってしまったやりとりでも、このイトコふたりは、今日もきっちりこなしている。方や机を拭きながら、方やコップを用意しながら、軽口をたたきあう様は見ていて微笑ましいと思うのだけれど……いい加減、毎回毎回、飽きないのだろうか。僕はといえば、台所で、袋から大量の缶ビールやら酒瓶を取り出して、冷やすものは冷やし、温めるものは適度に温める準備をして、そのやりとりに聴き耳をたてている。

「だいたいな、お前車持ってるんだから、わざわざアキラに酒持ってこさせるなよ。いくらアキラがバイク乗りだっていっても、酒飲むってなれば歩いてくるしかねえんだから」
「アキラちゃん、冬はバイク出してないじゃない。ハルちゃんってば過保護だなあ、可愛い彼女は外も歩かせたくないってか?」
「違ぇよ! 荷物持ちにかりだされる俺の身にもなれって話だ!」
「悠さんはアキラさんに重いもの持たせたくないんですよね、優しいなあ」
「帯人! お前まで……!」

 思ったことをいっただけなんだけどな。思わず茶化してしまったけれど、予想以上に怖い顔で睨まれてしまったので、さっき開けた冷蔵庫の扉の影に隠れる(それでも、悠さんの顔はまっかだったので、それほど怖さは感じなかった)。
 悠さんとアキラさんは、先日おつきあいをはじめたばかりだという。まあ、もともと仲がよかったし、いつそうなってもおかしくないような気はしていたけど、実際そうなってみると、悠さんは意外と過保護だった。アキラさんと一緒にいるときの悠さんは、アキラさんを甘やかしたくて仕方ない……というか、せいいっぱい大人ぶりたいオーラがにじみ出ている。尤も、アキラさんはあのように気の強い人だし、年上にも物怖じしない性格なので、悠さんはずいぶん尻に敷かれているみたいだけれど。
 ちょっぴり羨ましい、なんて思ってしまうのは、自分がVOCALOIDだからだろうか。人間同士ならうまくいくことも、人間とVOCALOIDではなかなかうまくいかないのかもしれない。いや、でもこう言っては難だけれど、僕の場合、どちらかというと、相手の鈍さに問題があるような……

「なにを物憂げに冷蔵庫を眺めているんだい、たいちゃん」
「うわっ」

 数センチ肩を跳ねあがらせて、背後に視線を送ると、手洗いから帰ってきたのだろう、アキラさんが小首をかしげていた。

「冷蔵庫、早く閉めないと電気も冷気ももったいないよ」
「あ、はは、そうですね」
「……なんだか、挙動不審だねえ?」
「え……そう見えます?」

 いや、そうでもないかも。そんなふうに言って、アキラさんは、僕が台所に出したままの瓶と缶を抱えて、美憂さんたちのいる隣の部屋に入って行った。
 そういえば、アキラさんは、最近表情がまるくなったと思う。とげとげした印象がなりをひそめているというか、無駄なとげを出さなくなった感じだ。人間関係はひとを変えるというけれど、あのひとも例外じゃなかったようだ。
 ……つくづく、自分の身に引きあわせて考えては、ちょっと情けなくなってしまう。食器棚の下の戸をあけて、おやつ袋の山をみながら、そっと溜め息をついた。

「帯人ー! 早くおつまみ持ってきてー」
「は、はい! 今行きます!」

 美憂さんがストックしているおやつ袋を抱えて、僕もリビングに向かうことにした。



「かぁんぱーい!」
「飲む前からできあがってんじゃねえよ美憂」
「いちいちうるさいなー、ハルちゃんは。このところ激務で死にそうだったんだから多目に見てくれてもいいでしょ!」

 美憂さんが、口の開いたビール缶をほとんどタテにしてのどに流し込む。ごっきゅごっきゅと飲む下し、おもむろに缶を口から離した美憂さんは、ぷっはあ、と、さわやかなんだかおっさんくさいんだかよくわからないような、それでもとっても気もちよさそうな顔で、大きく息を吐いた。

「なに見てるのよ、帯人」
「いえ、最近お疲れみたいでしたから、気もちよさそうだなあと思って」
「そうよ! もう何週間もお預け食らったことか!」

 美憂さんいわく、3月は年度末なので決算とかいうのがあるらしく、毎年2月の頭くらいからは会社に出る時間も多くなり、かなり忙しくなるのだそうだ。まだ日付が変わる前に帰ってくるからいいものの(それでも女性だからと退社時間は優遇されているらしいけれど)、3月はちょくちょく会社に泊まり込むかもしれない、なんて言われてしまっては、頑張ってくださいとしか言えなかった。
 時間があれば僕でも晩酌の相手をするのだけれど、このところ、美憂さんにはそんな気力もなかったみたいで、僕もお酒を勧めるのは遠慮していたのだ。

「ふふふ、久しぶりの全休よぉ……! 今日は飲みまくって、明日は寝まくるのよ!」
「先輩、目が血走ってます」

 若干引きつつも、アキラさんもビールの缶をひとつ開けている。……相変わらずペースが速い。僕も、缶チューハイを一口すするけれど、流石にあのペースでは飲めないなあ、と思う。
 ふと、アキラさんと目があった。

「筐体もお酒は大丈夫なんだっけ」
「はい、人間の食べるものならだいたい何でも大丈夫です」
「未成年設定の筐体でも?」
「そこは……たぶん大丈夫ですけど、マスターの良心にまかされるかと」

 実際、酔いやすい筐体と酔いにくい筐体で、かなりの個体差があるらしい。未成年として設定されている初音ミクや鏡音リン・レンの筐体でも、どれだけ酒をつぎ込んでも潰れないタフな筐体があるという。または、酒豪と名高いMEIKOの筐体でも、てんで酒を受け付けない筐体がすくなからずいるという。どういう理屈なんだか知らないけれど。

「ああ、そういえば、ウチはミクもリンもレンもそこそこ大丈夫そうだったぞ」
「悠サン、あんたに良心はないのかい」
「興味本位でちょっとな。めーちゃんにも止められたし、本人たちがあんまり酒のうまみがわからなかったみたいだからそれきりだけど」
「へえ、やっぱり飲めるんだね、未成年筐体でも」
「みたいだな」
「てことは、悠サンの家でお酒を飲めないのはおとうとくんだけってことか」

 たしかに、先輩――悠さんの家のKAITOを、僕はそう呼んでいる。アキラさんは「おとうとくん」と呼んでいるみたいだけど――の酒耐性のなさは尋常じゃない。缶でいうなら半分、コップでいうなら1杯半くらいで、先輩はダウンしてしまう。悠さんの家のメイコさんは結構お酒が強いほうだから、余計にそう見えてしまうのかもしれないけれど、それにしても弱い、と、認めざるを得ない。

「でも、帯人はメイコちゃんと張り合えたってきいたわよー?」
「張り合うというか……メイコさんに合わせて飲んでいたら、意外と飲めただけで……」
「にしたって、ウチのめーちゃんのペースに合わせて飲めるんだから、相当だろ」
「へえ、たいちゃん、意外といけるクチなんだね」

 俺だってめーちゃんには敵わないし。なんて言いながら、悠さんもビール缶を呷る。
 僕は、とくに酒に強いつもりはないけれど、一緒にお酒を飲んでいても先に潰れるのは美憂さんだし、そういえば悠さんと一緒に飲んだ時も、悠さんが飲むのをやめてからも僕はまだお酒を飲んでいた気がする。
 総合すると、僕はお酒が強い、ということになるんだろうけど……。

「そうだ、帯人、ちょっとアキラちゃんと飲み比べしてみてよぅ」
「は? 美憂、お前何言って」
「だってぇー、気になるじゃない、アキラちゃんがすぅーっごくお酒強いの、悠も知ってるでしょお? どっちが強いのかなあって思って」
「だからってわざわざ競争みたいなことさせなくても!」

 語尾にいちいちハートマークがつきそうな勢いの美憂さんに、怒気をあらわにした悠さんが噛みつく。突然話を振られた僕とアキラさんはといえば、飲みかけの缶を片手に、お互いきょとんとした顔を見合わせた。
 そして、はっとして机の上に並ぶ空き缶の数を確認した僕は、慌てて美憂さんに訊く。

「美憂さん、それ何杯目ですか」
「んぅ~?」

 だめだ、焦点があってない。ろれつもアヤシイ。ほっぺが赤くて、瞳がちょっとうるんでて、実際の年齢よりもかなり幼くなって見えて可愛いけれど、これはあきらかに酔っている。

「悠さん、いくつ飲みました」
「まだ1缶しか空けてないぞ。今飲んでるのが2缶目」
「アキラさんは」
「ふた缶。そろそろ瓶を開けようかとおもっていたところだけれど」

 机に転がる空き缶は、7缶。ということは、僕はまだ1缶も空けてないから、美憂さんはこの短時間で4つも缶を空けた計算になる。そういえば、最初からかなり飛ばしていたっけ……。

「美憂さん、あの」
「ねー、帯人も気になるよねえ、アキラちゃんと帯人のどっちがお酒強いのかー」
「いい加減にしろよ、美憂」
「お酒の強さで帯人にかなわないよーなハルちゃんはすっこんでてくらさーい」

 美憂さんのひとことに、悠さんのどこかから、ぴし、と、ヒビのはいるような音がした(気がした)。

「おー。そういうこと言うか、美憂。じゃあもういっそ全員で飲み比べすりゃあいいんじゃねえか?」
「やめなよ悠サン、酔っ払い相手に大人げない」

 ぴしゃりとたしなめるアキラさんは、冷静だ。ぐ、と言葉に詰まった悠さんが、苦々しげにアキラさんを見るが、ここはアキラさんが正論だ。こういうとき、お酒に強いひとは頼りになる。

「でも、私もたいちゃんとは一度、一緒に飲んでみたいと思っていたからね。ここらで飲み比べてみるのもいいかもしれない」
「だよねー!」

 我が意を得たり、という風に、両手を組み合わせて、さも楽しそうな美憂さんが声を上げた。
 訂正。アキラさんは悪ノリするから、あんまり頼りにならなかった。

「アキラさんまで……僕はそんなに強くないですし」
「おや? 謙遜しなくてもいいんだよ。それとも、怖気づいたのかい?」

 む。
 アキラさんの、片方の口角だけを上げる意地の悪い笑みと、その言い方に、思わず眉根が寄る。怖気づく、だなんて、そんな言い方されると、さすがの僕でもかちんとくる。

「……いいでしょう、受けて立ちますよ」
「アキラ、帯人、酔っ払いの言うこと真に受けるな」
「べつに、美憂先輩に言われたからするわけじゃないよ、私個人の純粋な興味でやるわけだし。だいじょうぶ、私は潰れないよ」
「あのなあ……」
「悠さん、美憂さんがこれ以上へんな飲み方しないように見張っててくださいね」

 悠さんは納得してないようだったけれど、なんとか美憂さんのお守りをお願いすると、しぶしぶ頷いてもらえた。かくして、僕とアキラさんの戦いの火ぶたは、切って落とされたのだった。



「たいちゃん、お酒の好みは?」
「ビールとかはあまり……甘い方が好きです」
「じゃあこれなんかどうかなあ。ピーチツリーと言ってね。ピーチリキュールなんだよ。これにウーロン茶を適度に混ぜると、レゲエパンチというのになるんだけど」

 すっと渡されたのは、茶色い瓶。ラベルには桃の模様が描かれている。
 リキュールがコップに注がれる。透明なその液体から、ふわっと桃のにおいが香った。

「……茶色じゃないんですね」
「ん? ああ、色?」

 茶色い瓶だったから、てっきりそういう色のお酒が出てくるものだと思ったのだけれど。僕がまじまじ見ていると、アキラさんは得意げに言った。

「日に弱いお酒の瓶は、こういう濃い色のが多いんだよ。風味が変わってしまったり、変色してしまったりするから、日光にあたってしまってもだいじょうぶなように」
「へえ、そうなんですか」
「行きつけのバーのマスターからの受け売りだけどね」

 ウーロン茶を注ぎ入れると、アキラさんはマドラーでコップの中身をくるくるとかき混ぜた。沈澱していた透明な液が、もやもやとウーロン茶に溶けて行く。どうぞ、と、差し出され、いただきます、と、おっかなびっくり口をつける。
 桃味とウーロン茶なんて、どうなんだろうと思ったけれど、意外と飲みやすい。お茶の喉越しと、飲み終わりに口に残る桃の甘み。

「おいしいです」
「そりゃよかった」

 そういいながら、アキラさんは日本酒の瓶の口を開けた。

「もう日本酒ですか?」
「ん、私はこっちの方がすきだから」

 おちょこを片手に、アキラさんが満足げに言う。僕は、日本酒は辛くてあんまりすきじゃない。というか、美憂さんがあまり好んで飲まないからなんだけど。
 それにしても――ちら、と、アキラさんを伺うと、日本酒を冷で飲んでいるはずなのに、意外とかぱかぱ飲んでいる。日本酒は甘くないから飲みにくいとか思っていたけど、それって僕の気のせいなのかな? なんだか負けられない気になってきた。
 くいと飲みほして、自分でピーチリキュールとウーロン茶を混ぜてみる。

「ちなみにたいちゃん、カルーアとかは?」
「あ、カルーアも好きです、アイスにかけたりすると美味しいですよね!」
「カルーアもあるから、よかったらのみなよ」
「……アキラさんは?」
「とりあえずしばらく日本酒かな。飽きたら梅酒にするけど。梅酒は好き?」
「んーと、この間、黒糖梅酒とかいうのを美憂さんがもらってきてくれて、それはすごく美味しかったです」
「ああ、あれもアイスにかけると美味しいって話をきいたけど、どうなの?」
「美味しいですよ! お酒とアイスって意外と合いますよね!」

 聞けば、アキラさんはかなりの種類を飲んでいるらしい。大学生だし、酒どころの出身らしいので、きっと酒を飲む機会も多いからなのだろうけど、それぞれカクテルの作り方まできちんと覚えているのだからすごいと思う。
 アキラさんが言うには、飲み屋さんのメニューと言うのは、意外と自分の家で再現できるものも多いそうだ。たとえばさっきのピーチリキュールは、ウーロン茶を入れるとレゲエパンチになるし、オレンジを混ぜればファジーネーブルというカクテルにもなる。意外といろんなものを混ぜてみるとおいしいかもよ、といわれて、僕は、調子に乗っていろいろ試してみた。

「ピーチリキュール、梅酒とあわせても美味しいですねー」
「それはよかった」

 相変わらずアキラさんは日本酒だったけれど、僕は構わず色々と合いそうなお酒を混ぜては味見し、別のを入れて試し、というのを繰り返した。



「……さて、そろそろ酒が回ってきたかな、たいちゃん?」
「そんらこと……あえ?」

 アキラさんが持ってきたお酒はかなりの種類があって、混ぜて楽しむのに夢中になってしまったけれど、いつの間にかろれつが回らなくなっている。方やアキラさんはといえば、飲み始めたときとさほど変わらない、ふてぶてしい表情でこちらを見ている。なんだ、あの余裕。

「アキラさん、飲んれますかあ?」
「飲んでるよ。ほら。そろそろ一升なくなるころだ」

 持ち上げられた酒瓶は、確かにそろそろ空だった。
 おかしい。なんかおかしい。ストレートで飲む日本酒の方が、薄めたり混ぜたりして飲む洋酒よりもつよいんじゃなかったっけ。僕は洋酒ばっかりのんでいたけど、今日は一杯もストレートで飲んでないんだから……。
 おかしい。なんかおかしい。でも、なにがおかしいのか、よくわからない。あたまがふわふわして、身体があったかくて、ぼんやりしている。

「自分でカクテルをつくるとなると、個人の好みで酒の濃さを調節できる。でも、たいちゃんはかなり最初の方から、酒の濃いカクテルを作っていたみたいに見えたから、とうぜんかもしれない」
「らって、僕、適当な配分とか、わかりませんもん……」
「うん、教えなかったもん」

 はめられた。調子に乗って適正量を超える酒の入ったカクテルを空けていたのか、僕は。
 にこにこと勝ち誇ったような顔でこちらを見るアキラさんの顔が、そろそろ歪んで見える。

「たいちゃん。キミは飲み方を知らないからそうなんだよ」
「飲み方……?」
「ちゃんぽん、って、きいたことない? 今、キミまさにその状態だと思うんだけど」
「あの、いろいろ混ぜすぎたらだめってゆう……?」
「正確には、混ぜることじたいは悪くない。飲みやすいからって調子に乗るのがいけないんだ。カクテルってのは、飲みやすい反面、調子に乗りやすいお酒でもある。気付いた時には手遅れなくらい飲んでた、とか、気付かないうちにすごい量飲んでた、とか。度数の低いお酒ほど、量に気をつけないといけないんだよ」

 たしかに、いろんな酒を混ぜて遊んで……もとい、楽しんでいたのだから、仕方がないかもしれない。
 ああ、なんかいろいろぼやけてきた。

「でも、アキラさんだって一升空けてたのに……」
「日本酒はね、熱燗より冷の方が、酒の回りが遅いんだ。というか、食べ物飲み物はだいたい温かい方が吸収が早いからね」

 まあそのぶんあとからくるんだけどー、とか言ってるアキラさんの声が遠い。
 ああ、悔しい。純粋に酒の強さを競っていたわけじゃなかったのか。

「さて、この勝負、私の勝ちかな?」
「ひきょうれす……」
「要は勝てばいいのさ。さて、もう寝ると良いよ。後片付けは私と悠サンでしておいてあげるから」
「うぅぅ……」

 頭を撫でられて、迂闊にもほっこりとしてしまった僕は、そのまままどろみに身をゆだねていった。



 目を覚ましたのは、もう日も高くなってからのことだった。リビングはすっかり片づいていて、僕は床にそのまま寝転がっていた。身体に巻きついている毛布は、きっと悠さんかアキラさんがかけてくれたのだろう。変に酔ったからか、身体の節々に倦怠感が残っている。きれいに片づけられたテーブルの上には、悠さんとアキラさんが家に帰る旨と、冷蔵庫に残りの酒が入っている旨が書き添えられたメモが残っていた。
 美憂さんは、と、辺りを見回すと、幸せそうな顔で毛布にくるまってソファの上に寝ていた。

「……負けちゃいました」

 別に、美憂さんに実害はないのだけれど、なんとなく申し訳ない気もちだ。
 でも、美憂さんに潰れた姿は見せてないから、いちおう、体面は保てた……かな?

「ちゃんと、飲み方も勉強しないとだめですね……」

 結局、純粋な酒の強さという意味では、僕とアキラさんのどっちが強いかは、わからなかった。でも、この理不尽な敗北感は、いつか借りを返してやらなければなるまい、と思わせるに充分だった。

「次は負けませんよ、アキラさん」

Fin.



おまけ

「……アキラ」
「ごめんなさい……」
「さすがに冷でも一升飲めばそうなるってわかるだろ! なんであとから来るってわかってんのに、そう無茶な飲み方をする!」
「悠サン、声でかい。頭痛い」
「自業自得だ、阿呆!」
「いいじゃない、たまにはさあ」
「よくねえよ、迷惑だ!」
「たまにこういうことでもないと、おんぶなんてできないでしょ」
「……」
「じつは内心、役得ー、とか思ってるくせにー」
「…………」
「悠サン、アキラさんのムネ、あたってますけど、きもちいいですかー?」
「………………黙れ酔っ払い」
「……ごめんなさい」


*****


リクエストさせていただいた内容は、「アキラさんと帯人が一緒に飲む」というものでした。
けろさんちのアキラ嬢がザルという設定で、うちの帯人もお酒には強いという設定があったりしたので、前からそういうネタをやりたいなぁと思ってまして、ついリクエストしてしまいました^^;
私はまだ未成年ですが、お勉強になりますね……気を付けねば。
しかしこの帯人、実は頭が良い一面があるのですが……変なとこ馬鹿だよなぁ、と改めて思いました。KAITOが原型なだけはあるw←と同時に、アキラ嬢のしたたかさはやっぱりすごいなぁとも。カッコいいお姉さんって好きです。

作中で悠さんと晶さんが付き合ってるため、けろさんと相談して、コラボが終了するまでうpを待たせていただきました。
けろさんと出会った頃は、まさかこんな事になると思ってませんでしたね……。っていうかうちの子に彼女ができると思ってなかったw←

けろさん、本当にありがとうございましたー!
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コメント

No title

完結おめでとうございますうううう!そしてなんだこのおいしいものは!(酒的な意味で(←
・・・と言おう言おう思って、思ったまま月日が流れてました(あ)
基本的に鼻の下緩みっぱなしで読んでました。に、によによする・・・!
リアルで(体調崩さない程度に)頑張ってくださいね!
小春さん帰ってくるのを楽しみにしてますv

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